「ほう、今日も<花しずめ>か」
ああそうだ。一体誰のせいだと思っている?
「月待ち雲」桂
「悪い匂いじゃねぇが、麝香の匂いがちいとばっかし鼻をつくな」
「貴様と会う時はこれくらいで丁度いいのだ」
「麝香には性フェロモンが含まれてる、っていうよな」
「おれたちに必要だとでも?」そう言って、おれは出来うる限り婀娜っぽい流し目をくれてやる。
ねぇな、そう言いたげに片方の口の端をあげながら微笑むと、急に強くおれの両肩を押した。
あっけなく仰向けにされたおれに、いつもと同じ性急さでそのまま覆い被さると、いきなり指を後孔にねじ込んでくる。
苦痛に顔をゆがめるおれを嬉しそうに眺めながら、だんだんと指の動きを強めていく。
「いっ!」
少し苦痛が和らぎはじめ、微かに快感の波に運ばれそうになった頃、何の前触れもなくいきなり指を引き抜かれた。
陰液にまみれているだろうその指を、おまえはこれ見よがしに舐めてから、おれの着物の裾で拭いはじめる。
それが貴様の悪い癖だ。
ことの最中、何度となくそんなことを繰り返すから、おれが要らぬ苦労をする羽目になる。
この男には銀時や土方のもつ可愛い気は欠片もない。
それなのに、何故だろう?
月の出をひたすら恋いこがれてしまう夜の雲のように、この男を求めてしまう。
月の方にしてみれば、おれなど叢雲の一片かもしれぬというのに…。
Voici venir les temps où vibrant sur sa tige
Chaque fleur s'évapore ainsi qu'un encensoir
時こそ今は水枝さす・・こぬれに花の顫ふころ
花は薫じて追い風に・・不断の香の爐に似たり