数え日
100
今ので丁度、100
顎を突き出すような形で炬燵の台にのせ、おもいきり猫背になりながら、銀時は数えるつもりもなく100まで数えた。
大晦の夜。
除夜の鐘。
だらしがないからやめるように何度言っても銀時がその姿勢を改めないからだろう、新八が呆れ半分、怒り半分といった態で万事屋の扉をぴしゃりと閉めて出ていったのが四半時前。神楽も一緒に連れだしたことを思えば、多分、姉のお妙と一緒に初詣にでも行くのだろう。
この寒ぃのに律儀にまぁ
銀時は見慣れた壁を鏡に独り言を言う。
一人きりの万事屋はいつになく静かだ。
独り言でも言わなければ、鐘の音でも数えていなければ、碌でもないことに思考が囚われてしまう。
それが、嫌だ。
101
己らしく生き続ける為に選んだ道
その為に失ったものの大きさ
大切さ
102
そんなもの
解ってる
知ってる
充分すぎるほどに
103
だから
今更………
104
けれど
知らぬふりをすることも
気付かないふりをすることも
相応の努力を要する
それが現実
105
ああ、面倒くせぇ!
面倒くせぇんだよ!
段々独り言が大きくなる。
無理矢理にでも意識をよそに持っていかねば
己の心は…
106
清浄な鐘の音に逆らうかのように
刻一刻と沸き上がる欲望
否
渇望
107
もう
逃げられない
ああ、今年こそは
もう一度
おまえを
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