続・陽溜まり 後篇

「あのさぁ、おまえ、それマジで言ってるの?」
「当たり前であろう!」
おいおい、やっぱ本気かよ。高杉が聞いたら泣くね、情けなくて。
おれなんか情けなさ過ぎて段々腹立ってきたし。
「なぁ、ヅラぁ」
「ん?」
「おれ、おめぇの”おれなんか”の”なんか”ってぇのにカチーンときてんですけどぉ」
そういやこいつ、自分の身体を顧みてる暇がないとかなんとか言ってなかったっけ、病院で?
あ、思い出したらそれもムカツク話じゃねぇの。
「何故だ?」
「何故だ、じゃねぇだろうが。そういう言い方はおれにも失礼なのがわかんねぇ?」
ヅラは、ぽかんと口を開けた。そのまま何かを言おうとして唇を数回動かしたが、結局声にはならなかった。
「おめぇ”なんか”が目覚めるまで襲いもせずに優しく見守っていた銀さんの立場は?」
「や、それは人として当然のことだろうが!寝こけている者を襲うなど、けだものか貴様!」
「じゃ、おめぇ”なんか”のために、部屋の掃除やふかふかの布団を用意してたおれたちの立場は?」
「それもおれを入院させたことへの詫びの一環であろうが!それに部屋などは普段から掃除をするものだ」
全く、なんのかのと文句をつける奴だ。じゃ、こいつでどうだ!?
「おめぇ”なんか”に惚れてるおれはなぁに?」
さすがに寝起きに聞くには強烈な一言だったのだろう、ヅラは瞬時に耳まで赤く染めると固まってしまった。
当然だ。言ってるおれ自身がほとんどやけくそなんだし。
チャンスとばかりにヅラが我に返る隙を与えず、おれはヅラの両肩をがっちり掴む。

「ちょ…銀時…何を?」
「え?何って、ナニに決まってるじゃないの。おめぇ寝こける前におれに殺し文句言ったんだぜ?責任とってもらわねぇとな」
あわてふためくヅラに丁寧に答えてやるおれ。あー銀さんってばなんて親切なんだろ。
「おれが?貴様に?そんなわけあるか!」
「それがあんのよヅラ君。もうハートのど真ん中射貫き殺されましたよ、銀さんは」
「それは貴様の妄想、もしくは幻聴だ!」
「妄想はおめぇの十八番だろうが。こぉら、そんなもがかないの、無駄な抵抗されっと余計燃えちゃうんだけど?」
その一言でフリーズしたのを幸いとばかりに腕の中に深く抱え込み、口中を舐めまわした。
舌の根元からきつく吸い上げ、口蓋を擦るように貪ると、徐々に身体の強張りが溶けていくのが解る。
相変わらず感じやすい身体…。
「んぅ…ぅッ…あッ!」
音が出るほどにきつく首筋に吸いつくと、ヅラが肩をすくめて身を捩りはじめる。
皮膚の下の頼りなげな鎖骨の感触や着衣が少しずつ着崩れていく様、僅かに洩れる声が、おれの欲望を更に煽る。
おれは何度この身体を欲しただろう?そして、何度この身体を抱いたことだろう?
だから、おれは知っている。この先におれを待つものを。
ヅラは真っ白な喉を惜しげもなく晒して、おれの腕の中で果てるだろう。
琥珀色の綺麗な瞳をすっかり潤ませ、長い睫には涙の雫を宿し。
蕩けたような、幼い頃の面影を色濃く残す無防備な顔を見せる。
そうして、ぞくりとするほど甘ったれた声でおれの名を啜り泣くように呼ぶのだ。
「ぎんときぃ」と。
ああ、たまんねぇ。思い出しただけでイキそうだ。
可愛い看護師の恋も、白ペンギンもおれにゃ関係ねぇんだよ!
今、またそんなおめぇを見てぇ。その声を聞きてぇだけだ。
その一心で、おれはヅラを追い詰める。
着物を脱がせるのももどかしく、褄をめくり上げて手を滑り込ませると、下着だけをひん剥いた。
滅多に陽に晒されることのない脚や下腹部は他の肌にも増して、青白い。
和毛の萌え出すような草叢には、半ば勃ち上がりかけたモノがおれを誘うように先端に露を含ませている。
一息に根元まで咥え込み、丸ごと呑み込むようにして、吸いながら締めつけてやる。
「ふ…あっ!あ………やっ、やめっ…うぁっ!」
切羽詰まったような声を上げながら、身体を何度も跳ね上げる。
もう少しだー。
つ、とヅラが腰を浮かせた。
「ぎ、ぎん…っ、も…も…むりぃ…」
ヅラがひときわ高い声をあげると、おれの口内に熱いものが放たれた。
まだ小刻みに震えている両膝を立たせ、引き締まった白い双丘を両手で遠慮なく押し広げる。
固く閉ざされた薄い紅色をしたそれに、口内に含んだままのものを舌を使って塗りつけていく。
「……ひっ!」
短かい悲鳴が上がるが、そのままわざとピチャピチャという音をたてながら一心に舐め続けた。
やがて、そこがひくひくと淫らに蠢きはじめるのを待ってから、指でそうっと広げてやる。
鮮やかなピンク色をした粘膜がおれの目を射る。それからはもう夢中で、そこに舌を突っ込んだ。
「あ、あ…!あぁっ」
腰がなんども跳ね上がるが、構わずぐっと引き寄せてさらに舐め回し続ける。
「い…あっ…うっ…うんっ……あっぁ」
甘い声がひっきりなしに上がりはじめ、それを聞いているおれの心拍数も上がりはじめる。
丹念に濡らしたので指は使わず、おれ自身の先走りで濡れた先端を押し付けると、躊躇わずに腰を進めた。
後はそのまま、まるで温かい体内へと導かれるように埋め込まれていった。
「あ…はっ……くっ、うっ…あっ、あぁいっ……くっ…ぅあ!」
おれの突き上げに連動して、ヅラの口から嬌声が零れる。
きつく閉じられた目から涙の粒が溢れ落ち、両頬を伝う。
「ぎ…ん、ぎ…んときぃー」
うわ言のように名を呼ぶ声が、尽きかけた忍耐力を根こそぎ奪い去る。
「…いいぜ、ヅラぁ、イッちまえ」
「い…うっぅ、あっあぁぁぁぁぁっっ!!」
長い髪を振り乱しながら中心を弾けさせると、後孔がおれのものを咥えたまま激しく収縮し始めた。
「ちょ…待て、ヅラ、ちぎれる、ちょやべ、マジちぎれるって!」
眩暈がしそうなほどの絞り込まれる感覚に、おれはあっけなく遂情した。


「…なんだ貴様は」
掠れた声でヅラが凄む。まだ目が潤んでいるせいでちっとも恐くはないけれど、怒りはビシバシと伝わってくる。
「…えっと…退院祝いってことで…」
「…死ね」
「や、すんませんでした」
ここは素直に謝っておかないと、後でとんでもねぇことになる。下手すりゃ数ヵ月くらいはお預けをくうかもしれねぇ。
「えっと…お詫びと言ってはなんだけどよ、風呂沸いてんだ、入れてやっから、な?」
おれは揉み手をせんばかりに下手に出る。
「いい!」
「えー、だってヅラ君立てないでしょ?歩けないでしょ?んでもって自分で掻き出せないでしょ?」
「そんなことをいちいち口に出すな!」
「あー、はいはい。ごちゃごちゃ言わないで黙って連れてけってことだな」
ギャーギャー文句をたれるヅラを「神楽が起きっぞ!」の一言で黙らせると、抱え上げて風呂場に連れて行く。
力の入らない身体を抱えて石鹸を泡立てていると、またぞろいけない欲望が顔をもたげてきて、正直な息子さんが反応するのをヅラに見咎められる。
離せ、止めろ、と暴れるのを押さえ込んで、「さっきのはヅラ君への退院祝い、こっからはおれへの退院祝いでどう?」と言ってやると、渾身の力で ぶん殴られたけど、あいにくへろへろなパンチは痛くも痒くもない。
「ほらほら、そんなもがかないの、無駄な抵抗されっと余計燃えちゃうんだけど」と、つい最近言ったばかりのようなことを耳元で囁いてやる。
ヅラはその一言でフリーズし…

あとはただ、もう…………


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