※リク作品「杪秋の翳り」の没バージョンです。


「杪秋」


つい先ほど、すきま風に炎を揺らせた蝋燭が今まさに潰えようとしている。
これが名残とばかりに勢いよく油煙をあげる様は、まるで断末魔の叫びのようだと桂はふと思った。
そうして、ちら、と銀時の様子を探った。
飽きず桂を貪り続ける銀時は、心ここにあらずの桂にはまるで気付いていないようだ。

莫迦な奴……。
数年ぶりの再会が桂に仕組まれたものであると知っていながら、二度目を偶然の邂逅と信じるお人好し。

変わっておらんな、貴様は。おれなどに容易く誑かされおって。

どうやらおれは余ほど心根が冷たいらしい。
知らず苦笑する桂に気付いたらしい銀時が、全ての動きを止めて訝しげな視線を寄越した。
(もう二度と離さねぇ)銀時の顔がそう告げている。

無理だ。
裏切られるのは一度で十分。
おれはもう貴様の知るおれではないのだーと桂の心の底が泣いた。


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