諒恕 後篇

外気に触れた白い肌が一瞬粟立つ。
が、すぐに自らの熱によって匂い立つような桃色へと色を変えていく。
銀時はその様に煽られるようにうっとりと、目の前の細い片足を肩に担ぎ上げ、桂の全てを露わにした。
桂の中心部はすでに立ち上がりかけ、透明な滴を溢れさせて自らを濡らしている。
その先走りを桂自身に塗り広げて握り込むと、銀時はそのまま上下にゆっくりと扱き始める。
「っあっ、あぁっ…あぁっ!…んぁあっあぁぁ!!」

敏感な先端を刺激し、追い立てるように扱く速度を速めていくと、抑えきれない嬌声が紅唇から零れ出す。
「……っん、ぎ…とき…っ、…ぁっ、んぁ、ああっぁっ!」
切なく甘く自分の名を呼びながら果てる桂は凄艶で、銀時は自分が桂によって追い詰められていくような錯覚にすら陥る。
桂はじっと身を横たえたまま、荒い息をついて放心しているようだ。
すっかり萎えたものから伝い落ちる白い粘液を指にすくい取り、銀時は桂の後孔に手を這わせて解し始めてやる。

穿った指をきつく締めつけられた痛みで銀時はふと我にかえった。
やっぱまだまだきっついわ。
どうやってもヅラはまだ痛ぇだろうな。
悪ぃ、ヅラ。
でも、最後には絶対気持ちよくさせてやっから、な。
心の中でこっそり謝ると、銀時は怯えて身体に力が入るとかえって痛いだろうから、と前触れもなくそこに自身を宛がった。

「あっ…っつぅ!」
痛いのか、熱いのか、苦痛に呻く桂の身体を抑え込んでひと思いに突き入れた。
「くっ…」
あまりの狭さに銀時の痛みも半端ではない。
歯を食いしばって耐えても、耐えきれない呻き声がわずかに洩れる。

いつまでもたっても桂の中は狭いままで、蠕動を繰り返しては銀時の侵入を拒み、あまつさえ押し返そうとさえしてくる。
それを耐え凌ぎ、焦らず、急かず、ゆっくりと腰を押し付けるようにして奥へ奥へと入り込ませて行く。
途中、先端が小さなしこりに当たったような異質な感覚を覚え、一体なにかと思いながらも意識的にそこを擦り上げると、桂が髪を振り乱して高い嬌声を上げた。
その艶めいた声に頭の中を蕩けさせられ、銀時は我を忘れて同じところを責め続ける。
「も、離せ。無理だ…これ以上は…耐えられそうにない…銀時!!」
必死な面持ちでそう言うのに、銀時が腰を打ち付ける度に桂の中は蠢き、咥え込んでいるものを離すまいとするように強く締めつける。
口では与えられた快楽が強過ぎて苦しいと訴えながらも、身体は貪欲に銀時を求め続ける。
その落差がたまらない、と銀時は思う。そうして、もっともっとその貪欲さに応えたい、と。

銀時は、薄い背中に腕を回し、繋がったままの桂を胡坐をかいた自分の上に抱き上げ、ゆっくりと腰を落とさせてる。
「やぁ……ふっ…ふ…かっ…いっ…無理、だっ…あぁっ!!」
叫びながら桂の身体がのけぞる。
その弓なりに反らせた顎から胸元のラインが、銀時には特別に嬌艶に思えた。
桂に魅せられ、煽られて、腰を掴んだ両手に思わず力が入る。
そのまま激しく前後左右に細腰を揺さぶり続け、揺さぶられ続け、銀時は、桂は、ほとんど同時に、精を放った。

「あ、は…はぁ…んっ…はぁっ……」
繋がったまま、桂は銀時の胸に倒れ込んだ。
浅い呼吸に合わせて上下する華奢な肩に掌をおいて、「あとはおれに任せろ、おめぇはそのまま寝ちまえ」と耳元で囁いてやる。
桂はうっすらと笑みを浮かべ、銀時の胸に頬をすり寄せるような素振りを見せると、言われるままに眠りについた。
その寝息すら立てない静かな眠りに、銀時はホッと胸をなで下ろした。

翌朝、久し振りの深い眠りから覚めた桂は、自分の傍らで眠りこけている銀時と、床に無造作に散らばっている地図を見つけた。
地図の裏面、坂本の書き込みの隣には銀時ののたうつような字で細かく書き込みがされている。
それによると、複雑に見える曲線が土地の高低を表現、色によって山脈、湖沼、河川などの情報が描き分けられているとあった。
桂が気にしていた細かい線は、おそらく土地の傾斜の緩急によって線の太さが変えられている、と。また、斜面の方位によっても線の太さが微妙に変化しているのではないか、ともあった。
やはり地図なのか…というか、地形の鳥瞰図?…の詳細図?
正確にはどう呼んでいいか解らないそれを丁寧に纏め、桂はそう独りごちると、次にやるべき仕事を思いついてしまい、痛む身体を叱咤して立ち上がる。
そうして、いつになく頭がすっきりしている自分に気付いて苦笑した。
礼を、言うべきなのだろうがな…。
桂はまだ起きない銀時に上掛けを掛け、その上からそっと抱きしめてみる。
「おれはもう大丈夫だ」
そう耳元で囁いてみても、もごもご言うだけで起きない銀時を見て、桂は口元に笑みを浮かべながらそっと部屋を出た。

その夜、見計らったように戻ってきた高杉が、意味ありげな笑みを見せて銀時を居たたまれない気持ちにさせたことなど、桂は露ほども知らない。


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