「 縁 」1
最近嫌な夢を見る。
その結末はいつも同じ。
おれが殺されて終わる。
相手も同じ。
見覚えのない男。
ここ毎晩そいつに殺されて、目が覚める。
夢、なのだから実害はない…はずなのだが、ないこともないのが困りもの。
実際、殺される感覚がある。
起きた後でも残ってる。
刺し殺されたら刺された箇所がしばらく痛む。
くびり殺されたら寝違えたように首が痛い。
しかも、刺された場所にはそれらしき跡がうっすらとついてたり、首には手で絞められたような跡が……。
きゃぁぁぁぁぁぁ!
もうやだ!
なに、なんなのこれ?
呪い?
幽霊……じゃなくてスタンド的ななにか?
おれなにか悪いことした?
そりゃ、戦争中はいっぱい殺っちゃいましたよ、天人とか、天人とか天人を。
でも、毎晩おれを殺す男はどうみてもそこらにいそうな普通のあんちゃん。
しかもスゲェ気が弱そうで、おれを殺す時も、時折申し訳なさそうな素振りを見せる。
そんなんだったら、殺さないでくれねぇ?
あんな奴、夢ん中じゃなけりゃ一撃なのによ!
はぁ。
訳わかんね。
お陰で最近、食欲も落ち気味で、マジ体調悪くてよぉ……
「の、割に良く食ってるではないか、貴様」
人の不幸話を聞かされて、つっこむところはそこですか。相変わらずいい性格してんな、ヅラぁ。
「おれがパフェすら食べられなくなっちまったら、それこそ<お終い>ってことなんだよ!」
「おれを呼ぶのは<お終い>とやらになってからにしてくれ」
……泣いていい?
「お終いになっちゃったら、もうおれじゃねぇよ!スタンド的な何かじゃねぇか!」
取りあえず、そのむかつくくらい綺麗な顔面にいつものように蹴りを入れてやろうかと思ったのだが、自重した。
生憎とそんな元気すら、ない。
なのに。
「なんだ、今日は随分と温和しいな。ひょっとして貴様どこか悪いのではないか?」
って、おれの体調のバロメーターはそこなのかよ!
大体、最初ッから<マジ体調悪い>って言ってたよね、おれ。
人の話聞いてた?ね?絶対聞いてなかったよね?
あー、ほんと腹立つわ、こいつ。
でも、こんな風に目の前の人の話を聞かない、聞けないようなこいつだからこそ、この手の話には有効……な気がする。
こいつは昔から自分の世界ーおれが思うに、それは限りなく天上のお花畑に近い所ーで人生の90%を生きてるような筋金入りの電波だ。
こんな奴相手なら、幽……違った、スタンドだって手の出しようがねぇんじゃねぇか、と思うわけ。
だから。
「ヅラ君、今日泊めてくんない?」
「なんでそうなる?」
「うるせーよ!人が下手に出て頼んでんのに、他に言うことはねぇのかよ!」
「下手?」ヅラが睨めるようにしておれを見た。「どこがだ?」
「……こうやってパフェだって奢ってるわけだし?」
ヅラの綺麗な眉が片方だけぴくりと動いた。
「巫山戯るな!貴様がおれを呼び出しておいて、勝手にぱふぇを2つも注文しただけだろうが!」
「いや…ヅラ君、パフェなんて軟弱なもの嫌いじゃん。だから、おれが代わりに処理してるだけじゃん」
―いわば親切心じゃね?
「帰る!」
「ちょ、ちょっと待った!」
勢いよく席を立つヅラを特上天麩羅(2枚入り)蕎麦を奢る約束でなんとか引き留めると、そのままヅラの隠れ処に転がり込むことに成功した。
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