「縁」2
「じゃ、おやすみヅラ君」
「ヅラじゃない、桂だ。てか、貴様こんなに早い時刻にもう寝るのか?」
確かに桂の言うように、眠るには早いー早過ぎる。なにせ午後の五時。晩飯にも早いくらいだ。
でもー
「ここしばらくちゃんと眠れてねぇからな」
今なら横になって2秒で夢の世界に羽ばたける気がする。
「で、わざわざおれの家に来たのは何故だ?」
「あー、もう眠らせてくれない? 気持ちよく目覚めたら、理由は話すからよ」
それだけ言い、おれはさっさと横になって目を閉じた。桂がまだ何かぐじぐじ言ってたようだが、思った通り、おれは気持ちよく……気持ちよく……。
「おはようヅラ君!」
久し振りに爽快な朝を迎えた。
桂には、どこも早くない、と文句を言われたが、そんなことはどうでもいいくらいおれの気分は最高だ。
どうやら奴は、おれが万事屋にいる時だけ出るみてぇだ。他所の家までは追ってこねぇらしい。
狂喜乱舞し、ヅラにそう報告すると、「そうとは限らん」と冷水を浴びせられるような一言。
ちょ、せっかく恋人が喜んでるのに水差すことねぇじゃん、とおれは不満だ。
「実は貴様の夢とやらが気になって、昨日一晩様子を見ておったのだ」
は?
一晩中……って言ったよな?
「それって、ずっと起きてたってこと?」
桂は小さく頷き、「特に魘されている風ではなく、気持ちよく眠っておった」と教えてくれた。
うわ、それって特上蕎麦の効果?
おれへの深い愛?
どっちにしても、銀さん大感激!
「ヅラぁ!」
この感動をどう言い表せばいいかわからず、取りあえず、ぎゅっと抱きしめようと飛びついた途端、身を躱され、あげく「人の話を聞け!」と叱られた。
理不尽だ……。
「聞け、銀時。だがな、その男とやらは、ひょっとして、おれが側にいたから出てこなかったのかもしれぬぞ?」
「は?」
「おれ……てか、誰かが貴様と一緒にいれば、出てこぬだけで、ひょっとして貴様一人であれば、例えおれの家であっても出て来たやもしれぬではないか」
ちょ、ヤなこと言うなよ。
「逆に、例え貴様の家であっても、誰かが側にいれば出てこない、ということも考えられる」
確かに。
ほとほと困り果て、一緒に寝てくれと新八に頼んだ時は冷たい目で見られて終わりだったし、神楽には……、頼む根性がなかった。
だから一緒に誰かいたから出てこなかったのか、他所の家だから出てこなかったのかの見当はつかねぇ。
「もしくは、他所の家でしかも誰かが側にいたせいかもしれん」
うわ、それキッツいな。
せめて、<誰か側にいる>か<他所の家>かの二択にして貰いてぇ。
「だからな、今夜もう一晩、ここで寝ろ。一人でな」
「ちょ、マジ?」
「おれは丁度会合があるので留守にするところだったのだ。もし、今夜もその男が夢に現れなければ、
<他所の家で眠る>という条件だけが生き残ることになる」
「理屈は解るけどよ……」
でも、本当に?
本当に今夜、おれここで一人で寝るの?
てか、寝なきゃ駄目?
あ、なんか涙出て来た。
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