小夜終 捌

あぁぁ、は…はぁっ……っ
さきほどからおれの意に反して、声が次々に洩れ出しているのがしゃくに障る。
沖田はおれの体内に指を差し入れてまま、乱暴に掻き回し続けている。
とにかく体中が痛い。そして熱くてたまらない。
「へぇ…この程度でそんなに感じられるんですかい、あんた」
一体、誰に仕込まれやした?そう言いつつも答えを求めてる風でもなく、沖田はそのまま深く口づけてくる。
その口づけにどこか覚えがあり、おれはぞっとする。
なぜだ?いつ?一体どこで?
おれの動揺に気付いたらしい沖田は手を止めると、おれの目をのぞき込むようにしてゆっくりと問うた。
「思い出しやしたか?」、と。
それで、合点がいく。あのなくなっていた数日分の薬は、多分こうやって…。
おれが悟ったのを感じたのか、沖田は満足げな笑みを見せると再びおれの舌に自分の舌を絡ませながら、指ではおれの腸壁を弄り続ける。
体内を蠢く指と口内を攻め立て続ける舌に、残り僅かな理性がほころびはじめていくのを感じながらもどうする術もな…い。
…くっ…ん、ん…あぁ…ぅいあっ…。
喘ぎ声をこらえる気力も、抗う気力も着実に奪われて、おれは声だけでなく涙も堪えるのが難しくなっていくのを頭の隅でぼんやりと、まるで他人事のように感じ始めていた。

にち、にち…
くちゅ、くち、くちゅ、り…
沖田の指と舌はおれの体で浅ましい不協和音を奏でながら、いっかなその動きを止めようとはしない。
あっ…ふ。くっ…あっ。…んぅ…はぁ。
次第に、その動きに合わせたおれの喘ぎ声が加わっていく。
自分の両の目から、とめどなく涙が流れているのを微かに感じる。
こんな生意気な小童に…と頭では抗っていも、とうに理性から見捨てられたらしい中心部は、沖田が送り込んでくる刺激に従順な反応をみせているのをおれは知っている。
「案外、おれも辛抱が足りねぇ…」
その呟きが聞こえてすぐ、沖田が着衣のままでおれの両足の間に身体を入れてきたのをどこか遠くで感じた。
おれの体は後につづく行為を予想して、強張るどころか弛緩しはじめ、沖田を受け入れようと待ちかまえる。
それを忌々しいと思う気力はおれにもう、ない。
ただ、おれの中で一刻も早く果てて、この苦行から解放してくれることを願うだけだ。
「あ、ああ…んっぁ―っ!!!!!!」
指とは比較にならない昂ぶりがいきなり侵入し、全身が総毛立った。
敷布を掴んでいる手をこれ以上ないほど握りしめても、もう叫び声が抑えられない。
おれの体は沖田の侵入を歓迎しているのかいないのか、沖田自身を締め付けはじめる。
「いぃ感じですぜぇ…よく…締まりまさぁ…」
そう言って沖田は目を細めて見せた。
余裕ぶった態度と裏腹に、その表情と声に切羽詰まったものを感じたのは錯覚だろうか?
幾ばくかでも思考力が残されていたのはそこまでで、あとはただ沖田に奔放されるままの人形になり果てた。意志もなにも持たず、されるがままの玩具。

沖田は思うさまおれを貫き続け、揺さぶり、吼えた。その汗と熱がおれの体の外と内とを濡した。
おれは時に喘ぎ、啼き叫んだように思う。
絶え間なく揺さぶり続けられながら、おれは自分の意識が何処かに沈み込んでいくような感触を半ば夢、半ば現のなかで味わっていた。
それからのことはなにも覚えていない。

次に残っている記憶は、眠っている沖田の寝顔。おれを掻き抱いたまま小さな寝息を立てていた。
部屋に差し込む薄日が夜明けを告げている、そんな時刻のこと。


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