※リクエスト「3Zパラレルもの」です。
3Z全然詳しくないです。
それでも構わないと思われる方のみ、お読み下さい。





「道はそれぞれ 別れても」 その1


「◎△◇#&×■@☆!?」
最初は悪戯電話だと思った。
話の内容が理解不能だったせいもあるし、銀時が二日酔いだったせいでもある。が、一番の理由はかけてきた相手だ。
「だーかーら!さっきから言ってることが全然わかんないんですけどぉ?土方くぅん」
自分を蛇蝎の如くーとまでは言わないがー嫌っている相手からのまさかの電話。もちろんこんなことは初めてだったし、 第一声がそもそもおかしすぎた。
自称桂小太郎という奴を保護している。
逮捕ではなく"保護"なのは、明らかな別人だからーだと土方は続けた。
ならそれでいいんじゃね?
明らかな別人って判ってんなら、ただの"気の毒な人"認定して無罪放免ですむだろうに。
ところが、困ったことにこの自称桂小太郎、外見は確かにあの桂小太郎と瓜二つなのだという。
じゃ、本人じゃねーの?自分でもそう言ってるんだしよ。
でも違う、と土方は執拗に言い張る。
起き抜けにそんなことを聞かされては、銀時でなくても困るだろう。が、それを言うと、自分の方が余程困っていると土方は小声で喚くのだ。 "小声"と"喚く"は本来両立しない得ないはずだが、土方は電話の向こうでそれを見事にやってみせている。
案外器用じゃねぇか。
鼻をほじほじそんなことを考えていた銀時が、それは確かに聞き捨てならないとばかりに土方の話に耳を傾け始めたのは、その自称桂小太郎(ややこしすぎんだろうが!)が 土方や沖田、近藤はもとより新八や神楽のことは知っているとこたえるのに、坂田銀時という男には全く心当たりがないと主張しているーというのを聞き取ってからのことだった。



「二日酔いで寝ぼけてたってオチじゃねぇだろうな?」
土方の私邸とやらに駆けつけた銀時の第一声は盛大な自己紹介。
「てめぇと一緒にするなーと言いたいところだが、いっそそうであってくれた方がマシってもんだ」
「珍しく弱気じゃねぇか」
「弱気だと?そんなもんじゃすまねぇよ。なにもかもおっぽり出して逃げ出してぇよ」
どうやら事態は銀時が思うより深刻らしい。少なくとも土方はそう考えているようだ。
「で、どこにいんだ?」
その、桂のそっくりさんにして自称桂小太郎さんはよ。

土方に先導される形で、その自称桂小太郎がいるという部屋に辿り着くまでの短い間に、銀時はことのあらましを聞くことが出来た。
驚いたことに、街を歩いている時にいきなり話しかけられたのだという。
「なんてよ?」
「『未成年者の癖にタバコなど吸ってはいかん。しかも貴様風紀委員だろうが、土方!』だとよ」
「なんだそりゃ」
「知るか!」
そりゃそうだ。
「あげく『なんだ着物など着て?今日は季節外れの盆踊り大会かなにかか?そういえば近藤や沖田はどうした?』と矢継ぎ早に質問攻めだ。 今日がたまたまオフで良かったぜ。隊服着てたら、一応逮捕しなきゃなんねぇとこだ。なにしろ、誰がどう見てもあれは桂小太郎だからな」
でも、季節外れの盆踊りだなんて莫迦丸出しの発想はいかにも桂らしいと銀時は思うのだが。
「違う」
土方はにべもない。
「どこが?なんでそう思うわけ?」
だって、そっくりなんだろうに。
「まぁ、てめぇの目で確かめてみるこった」
からりと開けられた唐紙の向こうに"桂小太郎"は座っていた。真っ直ぐな姿勢。両手は軽く拳に握られ、膝の上に行儀良く置かれている。いつもと変わらない姿だ。だがー
「誰だぁあれ?そっくりでもヅラじゃねぇぞ」
「だからさっきからそう言ってんだろうが!」
そうでした。
泰然と構えていても隙がないのが桂だ。なのに目の前の奴は緊張感がびしばしと伝わってくる上に隙だらけ。むしろ隙しかない。 あれなら土方どころかトッシー、山崎にだって敵うまい。もっとも、それ以前に土方の屋敷にのこのことついてくる自体があり得ない……てか、そうであってほしい。
それに、本人にも変なコスプレ癖があるとはいえ、こいつの服装も大概変だ。詰め襟学生服だなんてどこの舟木一夫だよ。『高校三年生』気取りですかこのやろー。そもそもなんで高校生なんだか。
それでも、唐紙の開かれる音に振り返った貌は確かに今でいう高校生くらいの桂そのものでー
「えっと……おたく桂小太郎……くん?」
あまりにも似すぎている整った容貌に、幾分おどおどしながら銀時が問えば
「そう仰るあなたは、もしや先生……坂田銀八先生のご親戚かなにかですか?」
こちらも目を丸くして問い返してきた。
坂田……銀八? 八?
誰だそりゃあ。



「高校三年生」(唄:舟木一夫)
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