雲霧 3

「っ…!」
ヅラが思いの外高い声で悲鳴を上げ、躯を跳ね上げた。
おれが口に含んで味わっていたものに、つい歯を立ててしまったからだ。
常とは違うその声に、おれは己を浸食し始めていた暗い欲情に負けてしまうことを選ぶと、さらに強く噛んだ。
「ぎ…ん時!」

(なぁ、教えろよ、どこの誰なんだよ)

ちりちりとした痛みから逃れようと、再び身を捩り始めるのを許さず、おれは細い四肢を押さえ込んだまま二つの乳首に交互に噛みつき、捏ね繰り回した。それだけでは飽きたらず、硬く張り詰め紅に染まったとがりを更に爪の先で強く引っ掻く。
「ひっ!ああっ!」
そのたびに躯を捩りながら何度も悲痛な声をあげるが、おれは決して手を止めてなどやらない。
痛ぇだろうな。
そう、思っていながらも。
なぜ自分がこんな目にあっているのかが解らないとでも言いたげな切なげな両の瞳。それらを眺めながら手をゆっくりと背骨に添わせながら下へ下へと滑らせていく。途中、腰骨にも歯形を残すと、逃げようとする腰を押さえ込み、体躯を返した。
逃がさないよう再び腰を掴んで自分の方に押し戻すと、目の前に真っ白な尻が現れた。
痛みにうっすらと汗ばんだ双丘は実に蠱惑的で、おれの劣情を更に刺戟する。
「い…やだ!」
おれの視線を感じるのか盛んに逃れようとするのを押しとどめ、逆に両の手で双丘を左右に押し広げていく。

(教えてくれたっていいじゃねぇか)

「ひあっ…あっ」
「まるで処女みてぇに綺麗な色してんなぁ。自分じゃ見たことねぇだろう?ほんのりと濃い目の桜色なんだぜ?」
そう言いながら指で円を描くようにその窄まりを撫でてやると、甲高い声で啼き始める。
「へぇ、まだろくに気持ちイイことしてないのにヒクヒクしはじめちゃったけど、期待してんの、ねぇ?」
耳元で意地悪く囁いてやると、ふるふると首を振る。それにつれて畳を撫でるはずの長い髪がないことに、おれは更に苛立ちをつのらせていく。
「嘘ばっかり…」
そう言うと、おれはいやらしく誘う窄まりにツプリと舌を挿し込んだ。
「ひあっ!」
奥へ奥へと誘い込むように腰が揺れ始め、おれは尖らせた舌を、遠慮なくその中に飲み込ませて届く最大の範囲でニチニチと掻き回してやる。
「い…ひっ……!…う…うあぁ…」
そうされるともう耐えきれなくなったのか、喘ぎ声が先ほどまでとは比べものにならないほど頻繁にあがり始める。俯せになっているのでくぐもった声になるのが耳に余計にいやらしい。

(なぁ、言えよ)

揺れ続けている尻は、今やほんのりと桜色に染まり、更に汗ばみ始めている。
おれは舌をギリギリまで引き出しすと、そのまま、小刻みなピストン運動を開始した。
おれの舌が奏でる湿った音が淫靡だ。
「ん。くん。あっ、ああっ、いあっつ!」
「そんなにいい?」
「や…めっ!」
「なにをやめてって?」
「そん…な、とこで…」
「ん?ここのこと?」と今度は舌を抜くと、パクパクと開閉を繰り返す濃いピンク色の襞の一つ一つを確かめるように舐めてやる。
「んぁあっ!」
「はっきり言わねぇとわかんねぇぞ」
「しゃ…しゃべ……る…なぁっ!」
喘ぎの合間になんとかそれだけを言うと、後はもうおれに翻弄されるがままになった。
散々舐り、気が済むまで弄ぶんでから、おれはヅラの体躯を再び返した。
せっかく仰向けにしたというのに、ヅラは腕で覆うようにしておれに顔を見せない。
それならーと視線を下にやると、放っておいたままの性器が硬く反り返り、糸を引きながら陰液を滴たらせているのが目に入った。

(知りてぇんだよ…どうしても…)

色素の薄いそれはまだ一度も精を放っておらず、ぴくぴくと打ち震えながら解放を求めている。
少し触れただけでも弾けてしまいそうなそこにはあえて触れず、邪魔な腕を両方とも無理矢理顔から剥がし、そのままヅラの顔の両横で拘束した。
ヅラは硬く目を閉じたままで、決しておれの方を見ない。薄い胸が忙しなく上下し、肩で息をしている有様だ。
いつもは真っ白な裸体が、全体に薄桃色に染まっている。もう、どこも冷たくはないだろう。
しばらくそうして眺めていると、またその視線を避けようと性懲りもなくもがき始めるので、おれは両手の拘束を解いてやり少しの間だけ見逃してやることにする。
機をみて逃げはじめた躯を丁度よい頃合いで再び引き戻しそのまま両の足を肩に担ぎ上げ、更に逃れようとするのを構わず、そのまま中におれ自身を埋め込んだ。

「逃がすわけねぇじゃん…」
決して口に出来ない言葉の代わりにそれだけ言うと、白い躯は観念したように動きを止めて力を抜いた。
おれは腰を動かさないままに肩にかかるしなやかな足をぺろりと舐めた。
さぁ、どうすっかなぁ…。


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